最新デジタル技術と伝統技術の融合。京鹿の子絞 染色部門の伝統工芸士、松岡輝一が開発した独自技術「デジタル３Ｄ絞」は、まさにその言葉がぴったりである。松岡が経営する京都絞美京は、1959年より京鹿の子絞の製造販売 を行っている。
　近年、京鹿の子絞業界でも注目を集めたのが3Dプリンターだ。板締め絞染の道具（型）をコンピューターの3Dソフトでデザインし、3Dプリンターで出力すれば、激減する道具づくり職人の代わりを担うことができる。
　しかし松岡は「どうせ挑戦するなら、もう一歩進んだことをやりたい」と、デジタルの強みを生かした複雑な形状の道具をつくることに挑んだ。試行錯誤の末、柔らかな立体感を持った、新しい風合いの京鹿の子絞を完成させた。
　昨年開発したこの技術を用いて、今年は生地を薄くした春夏向けのスカーフを製作。ドーナツ形と円形の文様を斜めに配置し、ワッフルのような凹凸を持ったスカーフに仕上げた。